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やる夫はプロ野球選手になるようです 第二話 「やる夫とプロテスト」 

75 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:01:21 ID:.WuWRnIo
-やる夫がプロ野球選手になるようです-

第二話 「やる夫とプロテスト」


注) ・この話はプロ野球を元にした、作者のプロ野球妄想(妄想)ストーリーです。
    話の都合上、旧制度(現制度に合わない)の記述が含まれたりすることもありますが、ご容赦下さい。
   ・このスレのやる夫は捻くれています。やる夫の性格改変(?)にご容赦下さい。
   ・スレ主はやる夫初心者です。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。








76 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:02:14 ID:.WuWRnIo
 11月末日―VIP球場 午後
             __
〃 | ̄ \ ̄ ̄ ̄ ̄\ / ヾ
  \   |   ●  ● __
  ̄ ̄ ̄         \     「次は―長距離走か。距離は10キロだ。一次試験の最後のテストだ。気合を入れろよ!」
  |____/        ▼ |\ 〃
ヾ  |         _人|
   |      ___/
   \    /
    | | |
    (__)_)
   試験官 ぞぬ







77 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:03:01 ID:.WuWRnIo
一段と大きな試験官の声がグラウンドに響いた。
一斉にスタートを切るらしく、ぞろぞろとみなスタートラインに移動していく。

          ____
        /      \
       ─   ─    \
      (●)  ( ●)      \
      | (_人__)        |
       \` ⌒´       /
        / ー‐       ヽ
       /            `

これまでのテストで、やる夫は平凡な成績しか残していなかった。
短距離は下から数えたほうが早い。ここでなんとかしないとまずいのは、よくわかっている。







78 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:04:01 ID:.WuWRnIo
          ____
        /     \
       /  ─     \
        ' (●)       \
      (l、__)          |
        ⌒´         /
       `l          \
        l           \

野球は大学に行っても続けることはできる。
そこで自分が成長するだろうというのも、解る。

しかしそれではできる夫に一生届かないだろうことも、解っていた。







79 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:05:02 ID:.WuWRnIo
    / ̄ ̄ ̄\
   / ─    ─ \
 /  (●)  (●)  \
 |    (__人__)    |
 \    ` ⌒´    /
 /            |
(_ )   ・    ・  ||
  l⌒ヽ        _ノ |
  |  r ` (;;;U;;)   )__)
 (_ノ  ̄  / /
        ( _)
偶然だが、やる夫のしゃがみこんでいた位置がスタートラインだったので、やる夫は自然と一番前に出ることとなった。
また目立つと思うが、考えてみればここはアピールの場だ。

目立っている状態で好成績をだせば、チャンスは十二分にある。







80 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:06:01 ID:.WuWRnIo
開き直るべきだ。やる夫は腰に手を当てて大きく息を吸い、1つ勢いよく吐き出す。
     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)
/    (─)  (─ /;;/
|       (__人__) l;;,´|       チャンスはあるのだ。今がチャンスなのだ。
./      ∩ ノ)━・'/
(  \ / _ノ´.|  |
.\  "  /__|  |
  \ /___ /







81 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:06:27 ID:.WuWRnIo
         ____
       /   u \
      /  \    /\
    /  し (○)  (○) \
     | ∪    (__人__)  J |
    \  u   `⌒´   /

そう、この『入団テスト』こそが、できる夫に追いつくことの、最後の道なのだ。







82 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:07:08 ID:.WuWRnIo
-------------------------------------------------------------------------------------------

プロ野球選手となるための、基本的な道はドラフト会議で指名されることである。

簡潔に言ってしまえば、プロ球団からお誘いを受けるということだ。
プロ志望届けを出した選手達がこのお誘いを拒否しなければ、晴れて新人プロ野球選手誕生ということになる。

-------------------------------------------------------------------------------------------







83 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:08:16 ID:.WuWRnIo
/\ |  /|/|/|  ドドドドドドドドドドドド!!
  |      /  / |// / /|
  |   /  / |_|/|/|/|/|     (´⌒(´⌒`)⌒`)
  |  /  /  |文|/ // / (´⌒(´テストだ!!テストだ!!`)⌒`)
  |/  /.  _.| ̄|/|/|/    (´⌒(´∧ ∧⌒`)`)`)⌒`)
/|\/  / /  |/ /     (´⌒(´(,゚Д゚ )つ `)`)
/|    / /  /ヽ  (´⌒(´⌒  (´⌒( つ |〕 /⌒`)⌒`)
  |   | ̄|  | |ヽ/|  遅れるな!!   ( |  (⌒)`)⌒`)
  |   |  |/| |__|/.   ∧_∧ ⌒`).ドし'⌒^ミ `)⌒`)ォ
  |   |/|  |/  (´⌒(´( ´∀` )つ  ド  ∧_∧⌒`)
  |   |  |/    (´⌒(´( つ/] /    ォと( ・∀・ ) 突撃――!!
  |   |/        ( |  (⌒)`)  ォ ヽ[|⊂[] )`)
  |  /         (´ ´し'⌒^ミ `)`)ォ (⌒)  |

では、プロ球団の目に止まる活躍をできなかったアマチュア選手達は、プロになることができないのだろうか?

1つだけある。

それが、今やる夫が挑んでいる『入団テスト』である。







84 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:08:39 ID:.WuWRnIo
-------------------------------------------------------------------------------------------

『入団テスト』とは、各プロ球団が自主的に開くプロテストだ。
スカウトの目から零れた『隠れた逸材』を探すことを目的とし、合格者にはその球団への入団-
プロ野球選手となることが許される。

しかし、スカウトマンは『逸材』を見つけるプロフェッショナルである。
スカウトマンの目に留まらない逸材など、基本、いない。

当然合格者が出ないことも多い。

-------------------------------------------------------------------------------------------







85 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:09:36 ID:.WuWRnIo
-------------------------------------------------------------------------------------------
  |         |  |
  |         |  |_____
  |         |  | ̄ ̄ ̄ /|
  |         |  |   / /|
  |        /\ |  /|/|/|
  |      /  / |// / /|
  |   /  / |_|/|/|/|/|
  |  /  /  |文|/ // /    ∧∧
  |/  /.  _.| ̄|/|/|/      /⌒ヽ)
/|\/  / /  |/ /       [   _]    ∧∧
/|    / /  /ヽ         三____|∪   /⌒ヽ)
  |   | ̄|  | |ヽ/l         (/~ ∪    [   _]
  |   |  |/| |__|/       三三      三___|∪
  |   |/|  |/         三三       (/~∪
  |   |  |/         三三      三三
  |   |/                    三三
  |  /                    三三
  |/                    三三
そもそも、日本野球機構は一球団が保有できる選手数を決めている。
チーム編成の都合上、開きはするものの合格者を出すつもりの無いテストも多く存在する。

狭き門とは言えないかも知れない。
開いてすらいないかもしれない門。それがプロテストだ。

-------------------------------------------------------------------------------------------







86 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:10:20 ID:.WuWRnIo
-------------------------------------------------------------------------------------------

やる夫は当然の事だが、ドラフトにかからなかった。
他の球団のプロテストにも落ちた。

今年度行われるプロテストで、日程的に最後のプロテスト。
VIPスターズのプロテストに、最後の望みを賭けて挑んでいた。

-------------------------------------------------------------------------------------------







87 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:11:39 ID:.WuWRnIo
笛の音が響き、100人からなる集団は一斉にトラックを走り始めた。
                     _____
           r⌒ヽ、   .  / ー  ー\
          / \  \. / ( ●) ( ●)
         _/ / ヽ   /     (__人__) \   やる夫は最初から飛ばすことにした。
        〈__/  . |  |       ` ⌒´   |
             /  .\     i⌒\   /
              /   / ⌒ヽ, _.ヽ  .\/
        .__   r  /     |/ー、\   \
          "ヽ |  i,        ノ   .\^   i
            | ヽ./ ヽ、_../   /     .  ヽ、__ノ
            i /  //  ./
            ヽ、_./ ./  /
                / /
              ノ.^/   ダッ
           |_/
集団に飲み込まれては足が殺される。一か八かで飛び出してみようと思った。
ふくらはぎに力をいれてグンと蹴る。

同じようにスタートダッシュを狙った数人とともに、やる夫は大きく集団を引き離した。







88 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:12:13 ID:.WuWRnIo
10分もたつとやる夫は集団から一人抜け出して走っていた。
              ____
      ―― [] ] /      三\
     | l ̄ | | . 三     \ 三/
     |_| 匚. | 三  .   ( ○) (○)'
        | |  三  u   (__人__)  |
         |_|   三    .  ` ⌒´ /        息遣いはまだ整っているし、足どりもしっかりとしている。
   [] [] ,-    r⌒ヽ  rヽ,  }          スタートからペースもかわってはいない。
     //   三    i/ | ノヽ
   匚/     三   三   /    )≡
           三  三  /   /≡
         ニ三   ./   /
        二≡、__./    /、⌒)
        三          \  ̄
      三     /\    \
      三     /ニ ヽ 三   三
     三    /  ニ_二__/
     三  ./ .
   ≡  /  |
   ≡ /
  三_ノ

やる夫は快調に集団を引き離していく。







89 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:13:14 ID:.WuWRnIo

長距離走は得意だ。

          / ̄ ̄ ̄\
       /─    ─  \
      / (●)  (●)  ヽ
       |:::⌒(_人__)⌒::  |`ヽ
   ,ィTl'ヽ\  `ー´    /`ヽー;、
    kヒヒど, ((        (({⌒Yィ 、 ソ
      `´ ̄ヽ      ハヽ/`^ー′
           ヽ   ` /  '}
            >   /ごノ
        __,∠     /    キュムキュム
      〈、    /
       \、__ノ

ちょくちょく陸上部の顧問に野球部からの転向を請われたりもしていた。
だけど、やる夫のランニングは野球のためのものだった。







90 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:14:04 ID:.WuWRnIo

『ピッチャーは下半身が命。大投手になるにはまず走らないと。』

         ____
        /―  ―\
      / ●   ●  \
      |⊃ (_,、_,) ⊂⊃ |
   ,ィTl'ヽ\  `ー´    /`ヽー;、
    kヒヒど, ((        (({⌒Yィ 、 ソ
      `´ ̄ヽ      ハヽ/`^ー′
           ヽ   ` /  '}
            >   /ごノ
        __,∠     /    キョムキョム
      〈、    /
       \、__ノ

小学生のときTVのインタビューで憧れの投手が答えたこの言葉を、やる夫は信じた。
だからやる夫は走ってばかりいた。

安定した下半身を作るためだとか、投手には体力が重要だとかの理論は後から知ったものだ。







91名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:14:57 ID:5OqbO/DE
小さい頃のやる夫は純粋だったんだなぁ







92 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:15:04 ID:.WuWRnIo

坊主頭を卒業し、伸ばし始めた黒髪に汗が張り付く。

          / ̄ ̄ ̄\
       /─    ─  \   ←坊主頭ではないです。
      / (-)  (-)u ヽ
       |:::⌒(_人__)⌒::  |`ヽ
   ,ィTl'ヽ\u `ー´    /`ヽー;、
    kヒヒど, ((        (({⌒Yィ 、 ソ
      `´ ̄ヽ      ハヽ/`^ー′
           ヽ   ` /  '}
            >   /ごノ
        __,∠     /    キュムキュム
      〈、    /
       \、__ノ

20分たって残りは4000メートルを切った。足に疲労感を覚えたが、ペースは落とさない。







93 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:16:01 ID:.WuWRnIo

そういえば長距離走は唯一できる夫に勝てる種目だった
         ____     l_
       /   u \    /
      /  \   / \   >
    / U (○)  (○) \ \
    |    u  __´,_  U |
     \u    /__/   /







94 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:16:26 ID:.WuWRnIo

負けず嫌いのできる夫は密かに特訓をしていたようだったが、それでもこの種目だけは絶対に譲らなかった。
                     _____
           r⌒ヽ、   .  /     \
          / \  \. /   \  / \
         _/ / ヽ   /   ( ●) (● )
        〈__/  . |  |       _ __´__   |
             /  .\     i `ー'´´ /
            ./   / ⌒ヽ, _.ヽ  .\/
        .__   r  /     |/ー、\   \
       ."ヽ |  i,        ノ   .\^   i
         .| ヽ./ ヽ、_../   /     .  ヽ、__ノ
         .i /  //  ./
         .ヽ、_./ ./  /
             ./ /
           .ノ.^/   ダッ
           |_/







95 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:17:48 ID:.WuWRnIo
           ____
         /   ∪  \
       γ⌒) ノ三三三ゞ(⌒ヽ
      / _ノ (>)三(<) \ `、  だんだんと息苦しさを覚えてきたが、
     (  <:::∪:::::(__人__):::::∪|  )
      \ ヽ ::∪::::` ⌒´∪:://

                                                       ____
                                                      /     \
                                                    / ⌒   ⌒ \
                             ふと思い出したできる夫の顔が ./   (⌒)  (⌒)  \
                                                  |      __´___     |
                                                  \      `ー'´    /
                                                   ノ           \

           ____
         /:::     \
       /::::::::::     \
      /::::::::::         \
     |:::::::::::::::         |    やる夫に火をつける。
    /⌒:::::::::      ⌒ヽ/
  ;/::::::::::::            \;
  ;/::::::::::::::          \ ヽ;







96名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:19:03 ID:tAhgt1eI
純粋にすごく応援したくなるやる夫だ







97 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:19:12 ID:.WuWRnIo

やる夫はペースを上げた。

 \    \
  ヽ\、  ^\
\ .\\ヽ、   ^\、
 \ .\\ヽ \    |\
  \. \  \ \    λ\、
   \  \  \ \      \、
    \.  \   \ \      ^ー)\
     \  \.  ´⌒ヽ,⌒ヽ,_       ^)\、
      \  \.    人  λ\  ____   ^)\λ
       \.  「\    、  ヽ./ _ノ ヽ、\     |
        \ \ \    ヽ./ ( ○)}liil{( ○)   て
         \  \ .\ ./     (__人__) .\   (
          \  \ ^|       |!!il|!|!l|   |   r'"
            Z_ . ヽ、_\     |ェェェェ|   /   て
             Z_   .\______/    (
               Z_               r'"
                 Z、、            (
                  ⌒ゝ人/^ゝ人/^ゝ人/

ラストスパートで追い抜くランナーように。前に誰かがいるかのように。







98 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:19:42 ID:.WuWRnIo
  /u ̄ ̄u\
/  ┌-●---●、   
|Y  Y  u     \   「なんだこのタイム!?陸上やっていたのかお前?」
| |   |      Ξ▼Ξ
| \/|      _人.|
|    \_________ノ
\    /(T)
  |____|___|
 (__)_)

                    ノ⌒)
                  /(  / ノ⌒)
                  / / /   ( ,/
      ____ /⌒⌒`ヽ / ./  / /
    /     u \    _ \   / /
   /  _ノ  ヽ、_  \   / \ ヽ' /   
 /    ⌒   ⌒   \/\__.\__ノ
 | u    (__人__)    |
 \     ` ⌒´  u  /
   // ̄ ̄ ̄ / /
. //         / /
(_/          / /
         (_/
倒れこむようにしてゴールに入ったやる夫に答える気力は無い。







99 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:20:46 ID:.WuWRnIo
         ___
       /u     \
     / ─    ─.\
    /   (-)  (-)u\
    |     (__人__)     |
    \.u_ ` ⌒´    /
    /   \       \
     |     \, -‐- 、-‐- 、
     |\     \.  (" ̄ .入
    |  \    "  ̄ ̄ ̄  )
    |  / \,,_______人
     |      /\    \  \
    ヽ,____/;___\    \,,_ \,,__
              (______)___)
しかしこの季節に自分のベストタイムとほぼ同じタイムを出せたというのは、我ながらよくやったと思う。
これでなんとか、首の皮一枚つながっただろうか?

地面にへたり込んだやる夫は、静かにほかの選手が走り終えるのを待った。







100 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:21:18 ID:.WuWRnIo

長距離走は抜群の成績だったらしい。
ヽ         `  _
 ,)_,.v''´⌒ヽ.      ̄ ‐- ...
        )
...   ..:...   ´ヽ.
:.:.:.:.:.:.:.:.:..    :..:⌒;                  __,、         ノ⌒ー'
ヽ:_:.:.:.:.:.:. :. .: .:.:.:.:..:.ノ              ,r ヽ'⌒  `^j      ヽ ..:.:.:.
   ̄ `ー ‐-‐一´             r'´       `ー'⌒ヽ    `ー 、:.
           , '⌒ー-‐、       ヽ,  ....... ... .... . . .. .⌒ヽ
           ヽ-―--‐-ヽ.っ  r_,つ  ヽ.:.:._:_:.:.:.:.___:::.:.:.:.:..:::.:.:ノ- .__,.-
                              ̄   ̄ ̄  ̄ ` ̄ー-
       "::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::, ''''"゙"' :
         .゙::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,.''''''''
         .゙::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,´:
   .:::::::,,    . ., :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.,,,.、,,, :::::: _,,_        .,,,,,:,,,,,.
     ..;;      .゙''、:,.  , :::__ ::::::::::_,_:::::   .:゙ ''゙゛ `.`      ..:
     .;;:,,.      .″  .`  `゙'-.:"     ,      .,
      . .::;;                      .′     :"
       .:;;       .,:''''''







101 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:22:05 ID:.WuWRnIo

             (ヽ三/) ))
         __  ( i)))
        /⌒  ⌒\ \
      /( ●)  (●)\ )   スレテキニハツノカツヤクダオー!
    ./:::::: ⌒(__人__)⌒::::\
    |    (⌒)|r┬-|     |
    ,┌、-、!.~〈`ー´/    _/
    | | | |  __ヽ、    /
    レレ'、ノ‐´   ̄〉  |
    `ー---‐一' ̄

なんとかそれがアピールになったのか、やる夫は最終選考に臨むことができた。
最終選考は2チームに分かれての紅白戦である。やる夫は赤チームになった。







102 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:23:10 ID:.WuWRnIo

あてがわれたベンチの最奥に座りこむと、やる夫はむっつりと黙り込む。
       ____
      /      \
     / ⌒  ⌒   \
   /  (ー) (ー) /^ヽ
  |   (__人__)( /   〉|
  \   ` ⌒´  〈 / ⌒^ヽ
―――――――― \ _ _ _ )

同じチームとはいえ、隣にいる人間もライバルだ。
簡単な打ち合わせ以外の声はあまり聞こえてこない。







103 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:24:05 ID:.WuWRnIo

成績順に先発していくと通知がありやる夫は最後を任されることになった。
      ___
    /     \
   /  _ノ '' 'ー \
 /  (●)  (●)  \   イマノジテンデビリッテコトジャネーカオ
 |      (__人__)    |
 \      ` ⌒´   /

余程打ち込まれない限り交代は無いと言われたので、おそらく実際に投げるのは9回1イニングだろう。







104名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:24:31 ID:5OqbO/DE
このやる夫はよくも悪くも純粋すぎる感じがする
個人的に素直に応援したくなるタイプだ







105 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:25:05 ID:.WuWRnIo

      / ̄ ̄ ̄\
   γ⌒)      (⌒ヽ
   / _ノ ノ    \  \ `、   (こんな短時間で自分を認めさせることができるかお?)
  (  < (○)  (○)   |  )
  \ ヽ (__人__)   / /

それはやる夫だけでなく誰もが思うことで、重苦しい緊張感がベンチを支配している。







106 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:27:09 ID:.WuWRnIo

試合が始まると野球人の習性のようなもので少しずつ声が出始め、
チームにも僅かながら連帯感も生まれ始めてくる。
           o     ゜ o      。 ゜   。〇 ゚    。
 ゜ o   。 ゜    。 ゜    。 ゜   o           。   ゜
   ピッチャビビッテンヨー!。    。゜    O    バッターカカシデモダイジョウブダヨー!
 ♪  ∩ ∧∧     ♪ ∧∧           ∧_∧    .∧_∧ ♪
    ヽ (,,゚Д゚)      (*゚ワ゚)⊃♪.        (´∀`∩) ♪ (∩・∀・)
     ヽ ⊂ ヽ   ヽ⊂  丿           (つ  丿    (   ⊂)
      O-、 )~  ⊂ _ /             ( ヽノ    . ヽ/  )
        U       し    .        し(_)      (_)J
゜o    。 ゜    。 ゜    。  ゜   o             。   ゜
  。゜ ゜o  ゚  。 ゜       。 ゜  。  ゜     。〇 ゚      o
 ゜ o   。 ゜    。 ゜    。  ゜    o           。  ゜
    。゜         〇       o        。   ゜

中には近くのものと打ち解けて親しく会話をしているものもいて、ベンチの雰囲気は一見明るく見える。







107 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:27:58 ID:.WuWRnIo

しかしすぐに明るい雰囲気をだしているのが一部の人間だけだということに気付くだろう。
      __    __
      \ `V´  ,∠─;z_
   ∠´ ̄  ,、         \
   /  ,.イ/ニl l、       ヽ    r'⌒`ー'⌒ヽ
  /ィ ∠-ヘ v l トゝ、L_     l   (  : ダ
.   レレ=く二´ u ヾ二,‐- ゝ、_  |   )  : メ
.    |} =ゝ:|ニニ| <ニ_u | | |ニ、:|  (  : な
     ゝ二~イv v トニ~uノu|.|-リ.|  _ノ  : ん
    {r,ニ0L、__,、」ー0ニニ、||_ソ | ⌒)   : だ
.     } r'エェェェUェエエェ、 ハ  ト、 (  ! .あ
     l },..-─-r-─‐-、| / l | \ `ー-─--‐
_,.. -‐ァヘ!ユエェエエェェェヌ./v | l   |`ー-
   /  Οー'-'-ri-'-'-U' u l'    ト、.___」L(!(! __
-‐'''7   |:::::::::::U::::::::::    /    |   ̄|「 ̄ |「 ̄l.|
.  /     | u    v ○ /     | (ノ |! |) L゙=='」 o o o
 /_,.-─‐r ト、  u   __,.イ T''‐-、 │
        |. |:::`ー--‐'´:::::/ /     \|
      \\::::::::::::://
結果を残せた人間は一様にホッとして饒舌になるものの、その一方でチャンスを逃した人間は逆に黙り込む。
ベンチの中には勝者と敗者の2極化した雰囲気が生まれ始めていた







108 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:28:26 ID:.WuWRnIo

やる夫の隣に座っていた男はベンチ裏に引っ込んでいた。
           ____
         /       \
        /       ― ヽ       
      /         ( ●) '、
      |             (__ノ_)
      \            `_⌒
      /           \

同じピッチャーだったが、登板して2イニング目につかまり、
ワンナウトも取れずに5失点の醜態を演じて交代させられたのだ。







109 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:29:46 ID:.WuWRnIo
       ____
     /⌒  ⌒\
   / <・>  <・> \   イエア
  /::::::⌒(__人__)⌒:::::\
  |     トェェェイ     |
  \    ヽニニソ    /

ベンチにいられない程ショックを受けた男には悪いと思うが、やる夫にとってはチャンスだ。
男が予定の2イニングを消化できなかったため、やる夫が2イニング投げることになったからである。







110 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:30:18 ID:.WuWRnIo

     チラッ    ____
         /       \
        /       ― ヽ
      /         ( ●) '、     ぽっかりと空いた隣の席を横目にした後、
      |             (__ノ_)
      \            `_⌒
      /           \

      ____
     /     \
   /        \
  /           \         やる夫は投球練習のためにベンチを後にした。
  |              |
  \              /







111 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:31:20 ID:.WuWRnIo

やる夫の出番が訪れた。

                   __
                ,r' "    ゙ヽ、   うしゃらららーーー!!
                |___15_|
             . /  (○ )lilili(○)  ―_
              /    ⌒(__人__)ヽ   ―
            __|       |r┬|  .|    ― ―
      .    ,r" _ \.____ 、__.`ー'_/   ―_
        /_,/ /___     .  〉  ―
        {mンー《//''''''''//》ーmmン  ./
        ゙ ̄" ̄7"ー―゙/i ̄弋ソ__/
         //" ̄ ̄iヽ  /
       .// /.     | .|  / ´⌒;;
     / / /     / /  \ (´⌒;; ≡
     \./ /     / /\  ヽ (´⌒(´≡≡  ←リリーフカーです。マジでリリーフカーです。
      / /     / / :::::〉  〉 ´⌒(´⌒;;;≡≡≡
  .   / /     / / ::::/ ./ (´⌒(´⌒;;
     ト,,ハト、⌒\' .{ :::〈. Y´
     ,r"ー\\  ヽ,ヽ/\>
     {::{ / ヽ ゙̄i゙ ̄}゙/    (´⌒;;
     ヽヽヽ ´ ノノ:::::ノ  ´⌒(´⌒;;;≡≡   キッキッーー!!
      ヽ、二/::/ (´⌒(´≡≡≡
        ̄ ̄ (´(´⌒;; ≡≡

8回の頭に交代を命ぜられると、やる夫は勢いよくベンチを飛び出す。







114名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:33:48 ID:tAhgt1eI
まごうことなきリリーフカーだねw







112 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:32:33 ID:.WuWRnIo

マウンドに立ち、土の感触を確かめていると、自然と口元が綻ぶ。
       ____
     /⌒  ⌒\
   /( >)  (<)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \
  |    /| | | | |     |
  \  (、`ー―'´,    /

つらい登板だろうが、プレッシャーのかかる場面だろうが、投げられないよりはずっといいものなのだ。
そう思った。







113 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:33:30 ID:.WuWRnIo

マウンドに立つとハッ大きく息を吐き出す。気合を入れるためのやる夫なりの方法だ。
     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)
/    (●)  (● /;;/
|       (__人__) l;;,´|   ベツニタバコスッテルワケジャナインダカラネ!
./      ∩ ノ)━・'/
(  \ / _ノ´.|  |
.\  "  /__|  |
  \ /___ /

::::::... ..丶
:::::::.... ...\
:::.' ──-.. \
:::::::... ⌒__丶 \
:::::::::.... .'::. ).ヽ  .ヽ         気合は危険なほどあふれている。
:::::::::::.... __ ..丿   ヽ
:::::::::::...    ヽ   .ヽ
:::::.._ ノ ヽ.____丿   .丶      息を吐くごとに、やる夫の熱情が噴き出されていくようだ。
::::::::::::::.... ..::ノ      .)
:::::::::::..   ../       .ノ      
:::::::::.⌒ "       ..ノ
:::::::::::::::::....    ....::::::../
:::::::::::::::::::::.. ......::::./

この熱は8月からずっと、やる夫の体の中でくすぶり続けているものだ。







115 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:34:20 ID:.WuWRnIo
         i、 ,/f´'´レ=ニ-ァ
        iv' '´, ,-‐=ー'´、
         >-‐=:ーュ、-=ニ`>
        ,:i=三= ,! ト,)i、ミ`ミ、      ←キャッチャーマスクです。絶対キャッチャーマスクです。
    rv‐t')</ヾ,==へノ;〈゙ レ、ミ`、
    /`tj''´i/  `ヽ;-  ,.:'_,.-‐ャ゙`
   i '´ /    `ーァ、´ ,.-',´.'`=‐ァー--、
  f`iー-|     ,.-'/7'^>'.,' :',:'.'/   ヽ
  |_|__j、  ,:/;':/ i /´.' ,:.',:' .'/      |
  /'    l ,r‐'/;./ レ',:'.; : ' : .,.:'´      !
  |     |,!、_/: ;|  /, ,: , : ; /        /
  ヽ   トi |l|.il| ///,:'.:',i ヽ、_   r'´
  |   ノ ||il:`y'//.',;.:-r' ̄`ー、ヽ、i´

執拗にマウンドを掘り起こすやる夫に赤組のキャッチャーが歩み寄ってきた。
サイン確認のためだろう。
キャッチャーは大柄な男で、マスクでよく顔は見えなかったが印象としてはごつい感じがする男だった。







116 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:34:52 ID:.WuWRnIo
                 ,、 ,、_,......, _
              N `´    ̄/____
              |、,,/ェ´ェ´、_-- ̄/
             ..,〉,,,r´ヽ`~| ,ー、‐、~フ
             .`F・,彡∃ノ ||)..|ヽ<、
              i、´s゙´へノY(シ\.\           「18か?」
               ゙ィ、,,,...  .ノ...ト、ヽ‐`
               .. T_,..,‐´_,/\`゚
                  ,〉、~~ ,,r´,~,ー、______
                 ,.j.../ヽ//.././/// ~~\
               /~~/.j ./././././/./../    .ヽ
              .//./...j../////./././| |     .ヽ
             .///i ..|/.////.//./,/ |      ヽ
            ../.j.j./ ./..,'.,'.,'.,'.,'.,'/.,'.| ヽ      \
            〈/|.|| ./|.,'.,'.,'.,'.,'.,','..,'.,'ヽ ヽ       ヽ
            ..|.|.|.| ,',','.,'.,'.,'.,'.,','..,'.,'.,'\.\       |

年の事を聞かれているのだと気がつくのに、数秒間が空いた。
慌てて、そうですと答える。







117 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:35:27 ID:.WuWRnIo
                              。,r;'.:;:f''゙
                                 i'l゙t;::,:i'
                              i゙ ヾ;`i
                         。,.  ハ ノl,.ィツ,.rノ;,i
                      ,r'.;i iV゙ l'"r'´ '゙´-'((ァ
                      tヾ; ,l,' ,'  ,. '´; : ''"'i;ヽッ
                       'ゞ) >- 、.i..∠..,,:: ' ノr'ァ
                     _,.. -‐`l=ミニ:::;;;;::=,ヾミィ´iヾ、    「初受験か・・・俺は今年で6度目かな?もう28になっちまった。
                   ,r'"  ,r'〈ニ=三三=ィ 'ノノ',ハi''`     3打席とも凡退だし、もう駄目と思わねえか?」
                   /   , /とニ、>,=三=''<ノl'゙ソiiii、
                   ,.r'"  i ,',r'',ニ- ' ゙ヾ::っ ,/,.','>、iiiiヽ
                r'"     i,',',ι'r',.、  ヾr'"/',.', ',`,r'´\
               r┤      i', i i ,'`;゙'lゝ,._,,..`+','.,.',.'.,.',.',.. -‐ ヽ、
              r┘ヾ,、    ,l i i .i .i .l ,'l :o  l',.',.'.,.'/ '       i
                ,.ム -.、 ゙'-...,,,,ノ'l i i i i il l L.  -ィ、'.,',..': '       ,'
          , 、  ,.r'"    `ー ノ'  l ii i .i i i'r'     ヾ         /
      ,.' ィ;r'''"゙      ,r'"   l il i i .i i、',     l'_       ,i'
    r::;ニツ ヾ~ 、     ,.'     ,',.ii i .i i'、',    l;、ヾ、    /
   r':ーぅ::...ノl _,,. i    ,r'-'     ィi 'i .i i .i iバ:    ハ ヾ- ノ
    ゙、三ッ _,ノ゙oノ  ノ       ,r'゙l.i i i i .i i l0ゝ







118 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:36:04 ID:.WuWRnIo

答えようが無い質問だった。
           ____
         /       \
        /       ― ヽ
      /         ( ●) '、                   「・・・」
      |             (__ノ_)
      \            `_⌒
      /           \







119名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:36:35 ID:5OqbO/DE
キッツイ質問だな
返事は期待しちゃいないだろうが…







120 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:36:40 ID:.WuWRnIo

やる夫が黙っていると男は笑った。

              ,、.../|. /´|____,,,,.
             __|ヽ,' |/   ‐〃ー‐、
            ..ヽ          ー´、
             i    ,,,.‐、__ ,_  ‐´
             .〉ー‐・´,‐,ヽ‐,ヽ'ヽ .`ヽ.
             |='三´´,'~・.j..|。,.|\_,、〉
             .|=='_,..‐'ェノ..´'ヽ_ィ.| i~`ー‐‐、______         「一度落 ちればずるずるといっちまうぞ。解るか?」
             ..ヾ‐、_,''____‐, j‐イ...ノ`~ー‐‐´  ..`'',,.
               ,´ヽヾ=.' /_/ ..j..;..;..; .j     ..ヽ
              .|‐‐´~'ー‐‐、´ヽ ji..|..|..|...|      .ヽ
              |`(_,     ,`‐'、|.',',..|..|...|       |,
              | `ー´`ー´~  ..ヽ.',.',',..',,,)        |',
              |   i.',..\゚   `‐..','、'        |.ヽ
             ..,j   .\'.,..〉・´   `、(       ,‐´ ',
             ,‐´    ヽ.',(、     、r      /',..', ヽ
             i      .) \          /'.,.',..', .',

..      ____
     / ―  -\
.  . /  (●)  (●)
  /     (__人__) \                          「解りますお。一年でも無駄にするわけにはいかないんですお」
  |       ` ⌒´   |
.  \           /
.   ノ         \
 /´            ヽ
初対面の相手との会話に相応しくない、強い口調でやる夫が言う。







121 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:37:21 ID:.WuWRnIo

一瞬男はこわばると、ニヤっと野太い笑みを浮かべた。
                    /!/ ̄ー,
                  |`''      ァ___
                       (   .,,.‐、   ‐、ュ
                       ,〉ー‐´~,`ーi~|´`i ..ァ
                       |==='‐´,.!..|..|.)..|、,‐ゝ___,,,,,,、
                       i==三´ニ_ノノヽ/.ヽ、~,.'.,ヽ  .\
                  `ー、_,´__. ../ ./ `,',..', 、  ..ヽ
                   ,//ヽ,.__,/´ー,´ヽ..ヽ',.','..,ヽ  ..\      「毛色が違うな。」
               /´ヽ、ヽ'.,'.,'~.'.,'.,ヽ.iーi 、...|.',', ',、    \
                    ,'   ヽヽ',.'.,'.,'.,'.,ヽ '、..ヽ.|ヽ'.,..',ヽ    .ヽ
              /     .|',ヽヽ'.,'.,'.,ヽ、: ヽi.',', .|..|    ,/,∧
              j      |、'.,'.,'.,'.,'.,'.,',.v ..ヽ',', |..|   ,,・ .ヽ
             /     .j..j',ヽ',.',.'.,'.,',.'.,',',  |.|.| |..| ̄(    .ヽ
            .(ー‐‐――(ヽヽ',..',',',',',..',',.',',.ヽ...|.|.|..|...| ...|     ...|
     i――‐i,_____..)     ..).ヽヽ'.,.',',',',',..',',.',',',ヽj.|.|..|...|   |    ...|

      _____     ━┓
    / ―   \    ┏┛
  /ノ  ( ●)   \  ・
. | ( ●)   ⌒)   |
. |   (__ノ ̄    /
. |         /
  \_      _ノ\
    /´         |
.     |  /       |







122 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:38:10 ID:.WuWRnIo

いぶかしげな顔になったやる夫を見下ろして、さらに男は笑みを強める。

       _,,..-‐''"  ヽ o ',_,,.ノ  ノ    ヽ,
     ,r'''"       ヽ-‐''"ゝ`''<       /ィ 、.,,_
     l          'r‐'''" `'''"`>、_,.,ノ.ヽヾヾヾーッ
      l     _,,,ッ‐,―''"         i゙ヽ  -、,ィl,ll || ll lヽゝ
      l,,,_   _ノ ̄ヽ、        i ヾ  ゝ、'-,,ィィ 、ヽ
      ヽr==''    ヽ`'''''ッ、   r',  ゝ==,''ミ三ノ、', ヽゝ
       l,            ,.-‐=ゝく..,,,,__..:::::::::>ー= '  i N          「受かりそうだって事だよ。」
       ゙ー、       ,ィ'"';ィX_,,.)   _二ニ< ,' ィ ,. ノ lヽ'
         \   /,',/' ,/ _,.lィ‐''"-:=:三::>-=-(V
           ヽ/','/  /, ',. ',. ',. ',. ',. ',./      ヽ
              /,.','/  ./', ', ',. ',. '///       ヽ
          //,'/ /'.,.'.,.',. ',. '// / ,
             l,','.,'./,'.,.'.,.'.,.'.,.'.,.' ./ ,ィl  l
          l',','l/,'/,.'.,.' /.,.'.,.' .,.' / ,ィl   l
            l,','/,'.,'.,'.,' ././,.' ,.' ./ /,人  ゝ、 ,
          l,','l.0,'.,' ,' ,'.,'/ ,.' .,.' .//,ィiiiiiiiiヅヽi   ,
         l,','l.,'.,',' ,' ,.' ,' ,.' .,.' // ,ィiiiiii/   `ー-<,/

簡単なサインの取り決めを交わすと男はポンとやる夫の肩を叩いてホームプレートに戻っていく。
やる夫は不思議な力強さを覚えた。

今日は、うまくやれそうだ。
          ___
         /     \
       /   \ , , /\
     /    (●)  (●) \
      |       (__人__)   |
     \      ` ⌒ ´  ,/
      ノ          \
    /´      _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
    |    l  ( l / / / l
     l    l  ヽ       /







123 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:38:45 ID:.WuWRnIo
                           ‐― 〇 ――
                   , ⌒⌒ヽ      / l \
           ,        (      )       |
   , ⌒ヽ   (     ヽ   ゝ    '⌒ )      ⌒ヽ
  (    ⌒ '        (        ' ⌒ヽ  (
   ゝ        ( ⌒ヽ              )  ゝ
  (         ゝ    )        (     ),
(´         (      ⌒      (       ⌒ヽ
          .
          |fi三二⊃     ,.-、
         __',,...jヽ二ニゝc;-―'-,=
        (、._   ⊂ニ=_,.-‐''''"
           ̄ ̄ ̄ ̄
―――――――――――――――――――――――‐‐‐
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124 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:39:26 ID:.WuWRnIo

先頭バッターを三振に切ってとったやる夫は、自分の調子のよさに感心していた。
よく冬場にここまで上手くコンディションを整えられたと思う。
        ___
      /      \
   /          \
  /   ⌒   ⌒   \
  |  /// (__人__) ///  |
. (⌒)              (⌒)
./ i\            /i ヽ

最後のストレートに至っては、やる夫が目標においている140キロに届いたかもしれない。
いけるという気持ちが強く出て、熱くなった気持ちを抑えるのに苦労するほどだ。







125 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:40:09 ID:.WuWRnIo

やる夫の球種は投手として平凡である。
          ____
+        ./ \  /\ キリッ
      / (●)  (●)\
    /   ⌒ノ(、_, )ヽ⌒  \    デモコウコウセイトシテハユウシュウダトオモウオ
    |      `-=ニ=-      |
    \      `ー'´     / +

130キロ後半のストレートと大きく縦に割れるカーブ。
そして手元で小さく曲がるスライダーの3球種。

大きな武器は無いが穴が少なく打ち崩しづらいピッチャーと地元の新聞には書かれていた







126 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:41:27 ID:.WuWRnIo
  \  /
    X
  / ∩
/ ( ⊂)     ____
   | |.    /⌒  ⌒\
   トニィ'  /( ●) (● ) \
   |   / :::⌒(__人__)⌒::::: \   実際できる夫の休養のために投げた甲子園予選では12イニングを2失点。
   \  |     |r┬-|      |   大きなカーブを多投して好投を見せている
    \\_  `ー'´    _/
       ン ゝ ''''''/>ー、_
      / イ( /  /   \
      /  | Y  |  / 入  \
      (   | :、 |  / /  ヽ、 l
       j  | :   | / ィ    |  |
      くV ヽヘ_ ヽ  \  仁 」
        ー 〕   \  〉(⌒ノ







127 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:41:52 ID:.WuWRnIo

          . -─‐- 、
      /        \
     /⌒      ⌒   ヽ. ○  その大きなカーブを引っ掛けた2人目の打者があわてて一塁に走り出す。
      /( ●)   (● )   ハ,4L_  ボテボテのピッチャーゴロでやる夫は難なくツーアウトを取る。
     : :::: (_ , 、 _)  :::::  ノ  /
     ゝ.  `ー'    _ <  /
      >,ー一 ""   ,/
   , <´ /         /
   1  _ イ        |
     ̄_i          ∧    ヒダリナゲニナッテルケドキニスンナオ
     .´              `ー-.
    i     r‐- -‐、       i
    ゝ、_i      `ー─一'







128 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:42:41 ID:.WuWRnIo

しかし難なく行き過ぎたのだろうか。
やる夫は次のバッターにヒットを許した。
           ____
    ジー  /       \
        /       ― ヽ
      /         ( ●) '、
      |             (__ノ_)   ←1塁ランナーを目で殺すやる夫
      \            `_⌒   
      /           \
ツーアウト1塁。簡単に終われそうな場面から一転。嫌な雰囲気の場面を作ってしまった。







129名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 20:43:43 ID:tAhgt1eI
野球はツーアウトからが怖いからな







130 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:43:47 ID:.WuWRnIo

滑り止めのロージンを手のひらでポンポンと跳ねさせる。

    / ̄ ̄ ̄\
  /        \       上手いバッターではなかった。
 /    ─   ─ ヽ       浮かれすぎた面もあったが、それを差し引きしても今のヒットは偶然だ。
 |    (●)  (●) |      2塁ベース右を抜けていたが打球は遅かった。
 \  ∩(__人/777/       セカンドが下手糞なだけで、うちの学校の人間なら補欠でも捕るだろう。
 /  (丶_//// \

..      ____
     / ―  -\
.  . /  (●)  (●)
  /     (__人__) \     気にするな。普通にやればいける。
  |       ` ⌒´   |      
.  \           /
.   ノ         \
 /´            ヽ

心の整理をつけたやる夫は次のバッターに向き直る。







131 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:44:25 ID:.WuWRnIo

次のバッターは背の低い男だった。
170センチはありそうだが野球選手の中では明らかに小さい。
.      , '´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:., : : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.: . /.:.:.:.:.:.:.:\
    <,____/: : : : :/ : : : : : :, : :.:::://.:.:.:.:.:.: /.:.:.:.:.:.:.:、.:.:..ヽ
        /.:.: .:.: .:./.:.:. .:.: .::::/.:::::;ィ:イ.:.:.:.:.: /.:,:.:.:.:.:.:,:.:ヾ、.:.:.:',
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.::::::;ィ.::// j.:.:.:.:..:ハ.:l:::.:.:.:.: l::.:.:'.,\.:',
.     /.:.:.:.::::/.:.:.:.:/.:.:.:.:.:::∠フ7=ム__j.:.:.:. /___>L、:::.:.:.ト、.:. l ヽl
    /:::::::::::::_/.:.:.::::l.:.:.:.::::/ ,ィfてT、 ¨|.:.:.:./.,ィ┬N.ヽ;::.:.|.ヽ:.:l
.     ̄ ̄ ̄/:..::::::_|.:.:.:../ く  辷ヲ   |.:.:∧ ヒ_ヲ 〉 ハ::.:|  ',:|
        /::::::::/r|.:.:.;イ        |.:/  、    ト∧:l  v
        ,::::::::::ヘ !|.:/rl|        V  /     l.リ. リ
       i:::::::_;、-ト|厂`            '    l
       レ'´  |:::::`ーヘ        ,、‐-‐、   /
            レ' |:::::ト|,\       ー‐    /
             |,、┴===キ、.       /   , -‐ri
           r='´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|. `' 、  /L、-‐'´   ||
           |:::::::::::::::::::.:.:.:.:.:ト,     ̄   |    -o‐ ||
           |:::::::::::::::::::::::.:.:.:| \      |         !|
            |:::::;、-―――┴---┐    \___|ヽ、
         r‐┴'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ー―--―\: : : : : : : ̄ ̄|
        _r--―――.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ー―‐--―‐\: : : : : : : .:.:|
      /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.○.:.: |.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ: : : : : : : :|
      /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ: : : : : : :|
しかし体格がどっしりとしていて、妙な圧迫感を発している。
今日の成績は三振一つと外野フライ2つだったはずだが、2打席目3打席目とも大きなあたりを放っていた。

気をつけなけれならないバッターだ。







132 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:45:07 ID:.WuWRnIo

初球スライダー。
バットの先を僅かに横切って空振りワンストライク。
          ___
         /     \
       /   \ , , /\
     /    (●)  (●) \         やる夫の体に力が入った。
      |       (__人__)   |
     \      ` ⌒ ´  ,/          よし。
      ノ          \
    /´      _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
    |    l  ( l / / / l
     l    l  ヽ       /

投手にとって1つ目のストライクのとり方は重要な課題の一つだ。
やる夫はこのバッターを打ち取るためのハードルを一つ越えたことになる。







133 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:45:38 ID:.WuWRnIo

二球目のストレートは見逃しだった。
インコース高めギリギリのストレートに相手は手が出ずツーストライク。
                                 ,.へ
  ___                             ム  i
 「 ヒ_i〉                            ゝ 〈
 ト ノ                           iニ(()
 i  {              ____           |  ヽ
 i  i           /__,  , ‐-\           i   }
 |   i         /(●)   ( ● )\       {、  λ
 ト-┤.      /    (__人__)    \    ,ノ  ̄ ,!
 i   ゝ、_     |     ´ ̄`       | ,. '´ハ   ,!
. ヽ、    `` 、,__\              /" \  ヽ/
   \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―--―/::7   ノ    /
       ヽ.      ヽ::〈; . '::. :' |::/   /   ,. "
        `ー 、    \ヽ::. ;:::|/     r'"
     / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
     | 答 |     三 振 リ ー チ       │|
     \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ

だが、ピッチャーとバッターの勝負は、終わるまで何が起こるか解らないことをやる夫は知っている。







134 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:46:03 ID:.WuWRnIo

ハッとやる夫は鋭く息を吐き出した。
     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)
/    (●)  (● /;;/
|       (__人__) l;;,´|
./      ∩ ノ)━・'/
(  \ / _ノ´.|  |
.\  "  /__|  |
  \ /___ /







135 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:46:48 ID:.WuWRnIo
サインは外。

ボール球のカーブ。

         i、 ,/f´'´レ=ニ-ァ
        iv' '´, ,-‐=ー'´、
         >-‐=:ーュ、-=ニ`>
        ,:i=三= ,! ト,)i、ミ`ミ、
    rv‐t')</ヾ,==へノ;〈゙ レ、ミ`、
    /`tj''´i/  `ヽ;-  ,.:'_,.-‐ャ゙`
   i '´ /    `ーァ、´ ,.-',´.'`=‐ァー--、
  f`iー-|     ,.-'/7'^>'.,' :',:'.'/   ヽ
  |_|__j、  ,:/;':/ i /´.' ,:.',:' .'/      |
  /'    l ,r‐'/;./ レ',:'.; : ' : .,.:'´      !
  |     |,!、_/: ;|  /, ,: , : ; /        /
  ヽ   トi |l|.il| ///,:'.:',i ヽ、_   r'´
  |   ノ ||il:`y'//.',;.:-r' ̄`ー、ヽ、i´

やる夫も同じことを考えていた。
     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)
/    (─)  (─ /;;/
|       (__人__) l;;,´|
./      ∩ ノ)━・'/
(  \ / _ノ´.|  |
.\  "  /__|  |
  \ /___ /

ノータイムで頷き投球動作に移る。







136 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:47:42 ID:.WuWRnIo

ゆったりとした軌道を描いて投ぜられたカーブは寸分狂うところ無く外角低めに飛んでいく。
しかしその軌道上にすっとバットが入り込んでくる瞬間をやる夫は見た。
       ____
     /ノ   ヽ、_\
   /( ○)}liil{(○)\      ―バットが長い!
  /    (__人__)   \
  |   ヽ |!!il|!|!l| /   |
  \    |ェェェェ|     /






138 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:48:34 ID:.WuWRnIo

規格外の長さのバットは正確にボールを掬い上げた。
                      __,,ィ'"::::://::: _/:::::::::::::::::::::::::\
                    /:::f::::::/:::/:/::: /::::::::::::::::::::::::::::::::\
                   /;__l|_/::::::::/::::_/ __;;;;;;_:::::::::::::::::::_
                ‐=ニニ~_::::::::::::::_/:::::_/'´::::::::::::::: _/::::::::::::::::::::::ヽ
          r-―――'":::,ェ-ー―:::::::i_:::::::::::/::::::::::::::::::::::::: z__:::::::::::::::::::::::::ヽ
         /::;;:::;;:::::;;;;:__,=ニ::::::::::::::::::::::゙l_:::::: /:::::::::::::::::::::::::::::\`ヽ_:::::::::::::::ヽ
        ./:::::;;::;::;;::;;;::;::::_ィr'´:::::__:::::::_ ゙l:::十- 、:::::::::::::\:::::::::::ヽ_:::::::\:::::::::::ヽ
       /::::;;;;;::;;;::;;;; '´,/::::/:::::: r'::::::::::::::::::::::\::::::::::::::ヽ:::::::‐=一;;;;;;;丶:::::::::|
       /::::::;;;;;;;,,_,,;;;;,,∠_::::/::_:::,ィ 'i:::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::i:::::::`ヽ、;;;;;;;;\::::: l
      /::::::;;;;;;;/  `ヽ;;::/://ー、/!::::::::::_::::::::::::::::::::i::::::::::::::: i:::::::::::::\ ;;;;;;;;;;;;;;i!
      /::::::;;;;;;;/、__/|!/::/ rt=_rt|、川,,::ハヽ::i'lミ,::::::::l::::::::::::::i::::::::z ̄;; `;;;;;;;;;;;;
      人:::;;;;;;_//  ,|;;;;;i イ { 、_'ソ'l | i:::::! i _=ーIzi:::::::|::::::::::::::i::::::::\;;;;;;;;;;;;;;;
    ;'´   `一'    l;;;;;::'┤`    ! |::| ,ィoi::廾、ヽ:::l::_:::::::::::ヽ::::::::ヘ_;;;;;;;;
   i´   jノ       !;;;;;;;;;l      , リ  、i_'ノ '´ノ_t;/ i::|へ、ヽ ̄` ;;;;;;;;;;
  _,;l'´`} ir'ノ       |;;;;o;;;,,.  ,  ,_′      〃 '´ z|_ンi!:::;;;;;;;\;;;;;;;;;;;;;;
,/ヽ _i゙-ー'゙       l_;-ー'"ヽ  `ー- __,    /-ー'´!:::;;;';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
ヽ /             !ヽ、  ヽ       _...:'´:::;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ
/             | ヽ丶  \ _ _ -ー" 、:::::::::;;::::::::::::::::::::::::::::-ー='
             /::`、ヾ、            \;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.:'"
            /:::::;;::::::\`    `=-―一 -=\;;;;;;;;;;;;;,ィ'´
            /:::::::;;;:::::::;;;丶、            ンー-"
           ,!:::::::;;;:::::::;;;;:;;;;;;\_     __,ィ'"& acute;:;;;;;;;;;;|
           ,i;,::::::;;::::::::;;;;::;;;;;/   `'ー-―i"::::::;;;;;;;;;;;::;;;;i
           i;;;::::::;:::::::;;;;;;:;;;/        l::;;;:::::;;;;;;;::;;;;;i
           l;;;;::::;:::::;;;;;;;;/        |:::;;:;::::;;;::::;:::;!

ゆっくりと放物線を描いてでやる夫の頭上を越えていったボールは、
何物にも邪魔をされることなくフェンスに飛び込んでいった。







139 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:49:21 ID:.WuWRnIo

言い訳することもできない、完全なツーランホームラン。

小さくガッツポーズをし、小柄な男はゆっくりと走り出す。
             r;r‐r/`!
             〈_L (`ヽ{
            l` ( ``/
            ヽ   l
            ,.-|,. -'´l
           r'‐'´:::::: |
            !::::::::::   |
          |:::::::    |
           |:::::::    |    _     、 _
          .|:::::::    |    \`'''ー- 、\`丶、
          .!:::::::.. .:: |  _,.. -‐''':: :::::::::::::::::::...丶、   
          |:::::::: .:::: |-二;;;::::::::...:.......   .:::::: _,. -
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         .|::...:::::: .:::〈∠::::::::::/ )//....\l/:::;,,. -;‐
         |:::::::::: .:  l/:::::::::l _ '´    '''"´ミ::::::ト、ヽ
         |:::::::: .:: .:: ト,フ:::/`l    ,. -=_-、´l!'|::;' ヾ!                
           |:::::: .: .:: .::::::.ヽ冫  '   〈 ゙、:::: >' ノ l/                 _   
           !:::: .: .:..::::::::::::...\      ヽL//          _,,... -一 ''/-ヽ-'゙`、
         l::: . .::::::::::::::::::o/    rー──く,r、‐ァ‐r、-ー''''''' "´     ..::::! -、_,.ヘ_)
         !:..: .::::::::::::::../ヽ`ー‐'゙レ'´: ::::::: l ll  l::::    ............:::::::::::::::r一、/
        .,': ..::::::::::o,イ´ r 、゙、‐r''´::::::: ::::: l ll  !:::::::::::::::::::::::_,,... --‐一''´ 
        /. .:::::::::://   l::::!ー、 ゙、:::::::::: :::: l ll l::; --─ ''' ´         
      / .:::o:::/ ,'    ` |::::| ヽ::::::::. ::::::|__ll__lノ           
     ./.:::::::,ィ´  .,'    !  !`'   ヽ:::::: :::::|'´                
     /:::::::,イ;;|         !  l    ヽ:::::.::::|                    
    ./:o:, ';;l;;;;!       l  l      ヽ:::.:::!
   /:::; ';;;;;l;;;;|          l  !     ヽ::::|
   /:; ';;;;;;;l;;;;;;!        l       |;゙、:!
  ./:/;;;;;;;;;l;;;;;;;|         l        |;;;゙、







140 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:50:29 ID:.WuWRnIo

        __
      /..::::::::::::::..\
    /..:::::::::::::::::::::::::.\
   /..::::::::::::::::::::::::::::::::::::.\
   | :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |    ギリっと奥歯がなったのがわかった。
   \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
  ,. -‐'´..:::::::::::::::::::::...`丶、
  ノ .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....ヽ

この試合初のホームラン。
誰の目にも誰が勝ち、負けたかは明らかだ。







141 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:50:57 ID:.WuWRnIo

棒立ちになったやる夫を気遣ったのだろう。
キャッチャーが立ち上がりマウンドに歩き出すのを、やる夫は腕を突き出して制止した。
        __
      /    \
    /        .\
   /           \
   |:::::::::         :::::|
   \:::::::      :::::::::/      ∩
  ,. -‐'´:::::::    ::::`⌒ ̄ ̄, ̄ ̄〆´ )
  ノ :::::::::::::::      :::::::.,__゛___、r  ソ







142 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:52:04 ID:.WuWRnIo

       /  ̄ ̄ ̄ \:
      ::/        ::::\:
     ;: |          :::::::| :
      \.....:::::::::    ::::, /
      r "     .r  /゚。
    :|::|     ::::| :::i           悪あがきに見えるかもしれないが、まだテストは終わっていない。
    :|::|:     .::::| :::|:
    :`.|:     .::::| :::|_:
     :.,':     .::(  :::}:
     :i      `.-‐"

       ____
     /     \
   /\   /   \
  /(●) (●))   .\
  |   (__人__)      |          腹の奥から息を吐き、全身に力を込める。
  \ ヽ|r┬-| /   /
  /   `ー'´      \ ハッ







143 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:52:29 ID:.WuWRnIo
          ___
         /     \
       /   \ , , /\
     /    (●)  (●) \
      |       (__人__)   |       これくらいで諦める位なら、自分はプロになろうなんて考えなかっただろう。
     \      ` ⌒ ´  ,/        諦めることを知るのは、もう少し先でいい。
      ノ          \
    /´      _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
    |    l  ( l / / / l
     l    l  ヽ       /

そしてやる夫は残りの打者には一本もヒットを許さなかった-







144 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:53:14 ID:.WuWRnIo

12月初日―毘都附学園付属高校
┏─────┓  . . ..::::::::::|  ||  ./
│≡≡≡≡≡│  . . ...:::::::|  ||/     ||
┗─────┛    . . . .:::|  ||       ||  |  .
    (◎)         . ..:::|  ||/     ||  .! :   :
    ヽ|ノ          . .::|  ||       ||   | :   :
__(__)_________|  ||       ||  | :   :
                \|  ||    / ||  ,i :    :
 ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄||.  \. // ,|i〕  | :    :
==||====||=〔 ̄ ̄ ̄〕||====||    \.    ||  ,| ::   ::
\||__\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\,||.      \  ||  i ::   :::
  \  ||\______\        \,||  | :::   .:::
 ̄||.   ||\||   :=:   || ̄        \ | :::   ::::
 ̄||:   ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| \         ノ .::::   :::::
  ||      ||          ||..  \         ゙^ヽ,  .:::::::
           〔 ̄ ̄ ̄〕.    \         `~、
 ̄ ̄\    \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\.. \
     \.    ||\______\ . \
 ̄ ̄ ̄||~     ||\||   :=:   || ̄.   \
 ̄ ̄ ̄||    ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||        \
      ||.       ||          ||







145 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:53:40 ID:.WuWRnIo
_______________________________________
============================
       |゚ ̄ ̄ ゚̄|       |   _______________
┌──┐   ̄ ̄ ̄~' ┌──┐ |    |┌───┐|┌───┐|職員室 |
│====│   □ □   │三三│ |    |│/./ . │|│/./ . │| ̄ ̄ ̄
│三三│   □ □   │三□│ |    |│/  /│|│/  /│|     __    <失礼しましたお
│[][]::::│   □ □   └──┘ |    |└───┘|└───┘|     |!┏゚|
└──┘      l三三!     |    |:[l         |         l]:|     ||⌒||
============================:   |          |          |     ||消||
                            |          |          |     ||〓||
                            |          |          |      ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

大きな音を立てて職員室の扉が閉まる。
                           |┃┃
                           |┃┃
                           |┃┃
                           |┃┃
              / ̄ ̄ ̄\         |┃┃
          /   \  / \   .三 |┃┃
         /    (●)  (●)\   三 |┃┃て
           |         (__人__)   |    |┃┃ て
         \      ` ⌒´  / _/`||┃┃
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∩ノ |┃┃ ドンッ!
         |  |           | ̄ ̄ |┃┃

学校の廊下を足音立てて歩くやる夫の気分は、まさに最悪だ。







146 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:54:17 ID:.WuWRnIo
             __
            -´   ``ヽ
          /::::::::::|::::::    `ヽ
         /:::\::::::::<● >   `ヽ
    ((   / <●>::::::::::⌒      )    「梅岡○ね!だお!」
        |  ⌒(_人__)       ノ | |
        ヽ    )vvノ:      / ノノ
          ヽ (__ン       人
           ヽ          \

5時間目の予鈴がなり、学校中に散らばっていた生徒達がこぞって教室に戻っていく。
そんな生徒達を尻目に、授業に行く気をとうになくしていたやる夫はフラフラと部室に向かう。







147 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:55:02 ID:.WuWRnIo

野球部の部室は部室錬にはなく、野球部専用グラウンドの隅に建てられている。

                 .|     ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
                 .|    ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄
                 .|   ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ ̄ノ
                 .|  @==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==@==
   ┌────┐     |      |             ┌─────────┐
   |  ∧w∧....│     |      |    ┌──┐ │  野球部  〈部室〉  |
   | (,, ゚Д゚) .|     |      |    │  目│ └─────────┘
   |  /   |   |     |      |    │甲指│  :========:.:========:  
   | 野球部 │     |      |    │子せ│  |i.     l||i.     l| 
   | 部員募集 |    |     |   │園  │  |i.     l||i.     l|
   └────┘     |      |    └──┘  |i_____l||i_____l| .
.                 |    /|              |┬┬┬┬||┬┬┬┬| 
.                 |  /  |              |┼┼┼┼||┼┼┼┼| 
__________|/    |_________________|┼┼┼┼||┼┼┼┼|_______
.                                  ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄

スポーツ名門校らしい贅沢さというか、プレハブではなくしっかりとした造りになっている上、十分な広さがある。







148 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:55:38 ID:.WuWRnIo

今年野球部は甲子園で優勝したため、この部室はさらに増築されるらしい。
次はシャワールームだと息巻いていた教頭の顔が頭に浮かぶ。
          ____
        /_ノ  ヽ\
      / ( ●) (●)、        ああいう大人には、部室の横に着いた水道から伝わせた貧相なホースで
    /::::::::⌒(__人__)⌒\       体を洗う心地よさは解らないのではないか。
    |      |r┬-|    |      
    \       `ー'´  /       やる夫はそう思った。
⊂⌒ヽ 〉        <´/⌒つ
  \ ヽ  /         ヽ /
   \_,,ノ      |、_ノ







149 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:56:11 ID:.WuWRnIo

錆が目立ち始めた部室の扉を開くと、中でビクリと体を跳ねさせた奴がいた。
おそらく自分を教師と勘違いしたのだろう。
    /||ミ
   / ::::||
 /:::::::::::||____
 |:::::::::::::::||      || ガチャ
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::|| ̄ ̄\ ||
 |:::::::::::::::|| ノ  ヽ_\
 |:::::::::::::::||●) (●) \
 |:::::::::::::::|| (_人_)    |
 |:::::::::::::::||___   /
 |::::::::::::::(_____ノ´||
 |::::::::::::::(_ノ / . . . ||
 |:::::::::::::::||/    ||                                         <ビクッ!
 |:::::::::::::::||      ||
 \:::::::::::|| ̄ ̄ ̄ ̄
   \ ::::||
    \||
部室で授業をサボル奴は多い。
元々スポーツ推薦で高校に来た連中ばかりだ。
授業についていける奴は少ないし、理解できない授業の授業態度がマジメになるはずもない。

教師も知ったもので少々のサボリには目をつぶっているというのが現状だ。







150 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:56:43 ID:.WuWRnIo

       ____
     /_ノ   ヽ_\
   /( ●)( ●)\       「やる夫だお!」
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \
  |     (  (      |
  \     `ー'      /

先客を安心させるよう、名前を言いながら入り込む。
電気がついていない薄暗い部屋の中、立ち上がりかけていた先客はその言葉を聞いて椅子に座りなおした。

                                                              __
                                                            /..::::::::::::::..\
                                                           /..:::::::::::::::::::::::::.\
                                                         /..::::::::::::::::::::::::::::::::::::.\
                                         「驚きました・・・」      | :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |
                                                         \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
                                                        ,. -‐'´..:::::::::::::::::::::...`丶、
                                                        ノ .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....ヽ







151 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:57:14 ID:.WuWRnIo

その声を聞いて逆に驚いたのはやる夫だ。
         ___
        / .u   \
      /((○)) ((○))\
/⌒)⌒)⌒. ::::  (__人__) l_j :::\     /⌒)⌒)⌒)   「できる夫!?」
| / / /     |r┬-|     | (⌒)/ / / //
| :::::::::::(⌒) U .| |  |    /   ゝ  :::::::::::/
|     ノ    | |  |    \  /  )  /
ヽ    /    └ー.┘    ヽ /    /

はい、だのとりあえずの返事をしたできる夫を、薄闇の中やる夫はまじまじと見てしまう。
野球だけでなく、何事にも真面目なできる夫が授業を抜け出しているというのが、やる夫には意外過ぎたのだ。







152 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:57:43 ID:.WuWRnIo

       ____
      /      \
     / ⌒  ⌒   \
   /  (ー) (ー) /^ヽ       「なんで電気もつけないお?」
  |   (__人__)( /   〉|
  \   ` ⌒´  〈 / ⌒^ヽ
―――――――― \ _ _ _ )

       ___
     /     \
    /  \   /\        「馬鹿言わないで下さい。見つかったらどうするんですか」
  /   (●)  (●) \
  |       __',_,    |
   \     /__/   /

            ____
          /― ― \
   rヽ     /(●)  (●) \
   i !   /   (__人__)     \
  r;r | ヽ |    ` ⌒´      |  「見つかるかわけねーお。馬鹿はお前だお」
〈     } .\           ./
 l    /  /           \
 ヽ   l /              \







153 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:58:30 ID:.WuWRnIo

半ば呆れながらやる夫が電気をつけるとできる夫は再びビクリと体を震わせた。
可笑しくなったやる夫が少し笑うと、できる夫はその笑いを咎める。

           ____
         /     \
       /        \
      /  \    /  \    「初めてですからね」
     |    (●)   (●)   |
     \      ´     /
     /      ̄ ̄    \

      _____     ━┓
    / ―   \    ┏┛
  /ノ  ( ●)   \  ・
. | ( ●)   ⌒)   |
. |   (__ノ ̄    /
. |             /
  \_    ⊂ヽ∩\
    /´     (,_ \.\
.    |  /     \_ノ

         ____
       /     \
      /  \  /  \
    /  (●)  (●)  \     「授業を抜け出すなんて不真面目なことは初めてなものですからね」
     |      __´___     |
    \     'ー一`    /
      /             \







154 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:58:59 ID:.WuWRnIo

    _.. ‐'''''''''''' ‐ 、
   ,r'        \
  /_,ノ  ,,       ヽ,
  ( о) ミ ヽ、,,,_    ..i        「そうかお」
  i.   ミミ( ○)    .|
  \(_入_ノ      /
    ノ__,,/,____/
    ./ゝ/ノ:::::::::::::::::\
    |ノ//::::::::::ヽ,::::::::::|
    |^::::::::::::::::::::::|::::::::::|
    |^::::::::::::::::::::::|::::::::::|

そう言うとお互いに話すことはもう無くなった。
パイプ椅子に座るできる夫からは見えない位置にやる夫は寝転ぶ。

この時期には冷える畳が敷かれている位置で、落ち着く場所としては人気が無い。
しかしできる夫と顔をつき合わせているよりは居心地がいいだろう。







155 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 20:59:34 ID:.WuWRnIo

別になにがあったというわけではないが、やる夫とできる夫は仲がよくない。
           ____
         /      \
        / ─    ─ \
      /   (●)  (●)  \
      |      (__人__)     |
      \     ` ⌒´   ,/
      /     ー‐    \

            ____
          /     \    
        / ⌒   ⌒ \
       /   (●)  (●)  \
      |      __´___     |
      \      `ー'´    /
      /           \

チームメイトだし、2年のときは同じクラスだった。
しかし同じポジションのライバルとして、どうしてもやる夫はできる夫を意識してしまうし、
できる夫はできる夫で執拗に自分を追ってくるやる夫を意識せずにはいられなかった。

しかしそれ以上に、"馬が合わない"というのが本当の理由ではないだろうか。
お互いを認めてはいるのだが、何故か相手を否定したくなるのだ。







156 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:00:03 ID:.WuWRnIo

微妙な雰囲気が部室の中に流れる。
静かな場所なのだが、やけに落ち着かない。

       / ̄ ̄ ̄ \
      /u ─    ─\
    /    (ー)  (ー) \
    |       (__人__) u |
    \      ` ⌒´   /
      / ヽノ   ⌒\__
     / |      \___)⌒\
     ` ̄\ \     -''' ⌒(___)
         \         /\ \__
           ` ―─―─´   ヽ___)

それはできる夫も同じようで時折チラチラとやる夫の様子を伺っている。

先に口を開いたのはできる夫だった。







157 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:00:39 ID:.WuWRnIo
           ____
         /     \
       / _,ノ  ⌒ \
.     /   (一)  (ー)   \  「やる夫君。何度も寝返りをうつのはやめてくれませんか?。気になります」
.      |        ´    ij  |
     \     ⊂つ     /
     /           \

          ____
        /     \
       ‐   ─     \
       (  ( ●)     \  「神経質な奴だお・・・だったらお前も深呼吸ばっかすんなお。
      (人__)         |   フシューフシューうるさいんだお」
       `⌒´         /
       `l          \
        l           \                                     ブルファンゴカッテーノ

       ___
     /     \
    /  \   /\       「人の寝方にケチをつけるのですか?あなたの方こそ神経質というんでしょう」
  /   (●)  (●) \
  |       __',_,    |
   \     /__/   /

          ____
        /      \
       ─   ─  ┛┗ 
      (●)  ( ●)  ┓┏    「難癖付けて来たのはそっちが先だお・・・」
      | (_人__)        |
       \` ⌒´       /
        / ー‐       ヽ
       /            `







158 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:01:32 ID:.WuWRnIo

しばらく罵りあいを続けたが、「フンッ」と言ったきり、できる夫が静かになった。
           ____
         /      \
        /  ─    ─\
      /    (_)  (_) \      「・・・」
      |        '      |
      \      ⌒   /
      ノ           \
           ____
         /      \
        /  ─    ─\
      /    (●)  (●) \      (ムカつく奴だお)
      |     (__人__)   |
       \     ` ⌒´   ,/
      ノ      ー‐   \







159 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:02:30 ID:.WuWRnIo
     ____
   /      \ ( ;;;;(
  /  _ノ  ヽ__\) ;;;;)
/    (─)  (─ /;;/
|       (__人__) l;;,´|             「マイペースっていうと聞こえがいいけど・・・
./      ∩ ノ)━・'/              お前はただ頑固で自己中なだけんじゃないかお?」
(  \ / _ノ´.|  |
.\  "  /__|  |
  \ /___ /

この言葉はできる夫は過敏に反応した。
毛布代わりにかけていたジャンパーを払い捨て、起き上がって反論してくる。
         ____     l_
       /   u \    /
      /  \   / \   >       「頑固?あなたがいうんですか?それを!
    / U (○)  (○) \ \        あなた自分で自分がどういう性格だかわかってます!?」
    |    u  __´,_  U |
     \u    /__/   /

かみ締めるようなできる夫の言い方に今度はやる夫が反応する。

         ___
        / .    \
      /((○)) ((○))\
/⌒)⌒)⌒. ::::  (__人__)   :::\     /⌒)⌒)⌒)  「ハアアアア?なに言ってんだお?全然意味わかんねーお!?
| / / /     |r┬-|     | (⌒)/ / / //   やるおに頑固な要素なんてひとかけらも無いお?
| :::::::::::(⌒)   .| |  |    /   ゝ  :::::::::::/     頑固の意味を辞書で調べてからくるといいお!
|     ノ    | |  |    \  /  )  /     やるおは腹からち○こに至るまでフニャフニャだお!」
ヽ    /    └ー.┘    ヽ /    /      

罵りあいはもう少し続いたが、5限終了のチャイムに遮られると互いにピタリと止めた。







160 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:03:01 ID:.WuWRnIo

暫くした後、できる夫がボソリと呟いた。
       ____
     /      \
    /  ─    ─\      「・・・6限もサボるんですか?」
  /    (_)  (_) \
  |        '      |
  \      ⌒   /

       ____
     /     \
   /_ノ  ヽ、_   \
  /(●)三(●))   .\     「ったりめーだお。・・・おめーはどうすんだお?」
  |   (__人__)      |
  \ ヽ|r┬-| /   /
  /   `ー'´      \

       ____
     /      \
    /  ─    ─\      「・・・」
  /    (_)  (_) \
  |        '      |
  \      ⌒   /

      ___
    /     \  チッ
   /  _ノ '' 'ー \
 /  (●)  (●)  \      「・・・おめーもかお」
 |      (__人__)    |
 \      ` ⌒´   /







161 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:03:31 ID:.WuWRnIo

フン、と鼻を鳴らすとやる夫は本格的に寝ることにし、
手の届く場所に脱ぎ散らかしてあった誰かのウィンドブレーカーを肌掛け代りに体に被せた。
          __  ______           __
          | |/─  ─ \ ======| |
          |/ (●) (●)  \       | |
         /  (__人__)     ヽ       | |
         |___ ` ⌒´      / ̄ヽ____| |
      / ̄JJJJ‐‐- 、_   _/__ノ   /| |
   _ /     ` ヽ__  `- ⌒ヽ     /  | |
  /    ヽ        `ヽ、}    ./  /| |
 ノ               ヽ__  `ヽ./  /  .|_|
/                   ノ |  /
                     /  |/







162 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:03:51 ID:.WuWRnIo
         ___
       /     \
      / /      \      「・・・プロにいくらしいですね」
    / (_)        \
    |'__,            |
     \           /

  ガバッ ! !  ______
        /:υ::─ニjjニ─ヾ
      /:::li|.:( ○)三 ( ○)\
      (:::||!.:υ::::: (__人__)):::: i|
    〃 ):::::::::::.   |r┬-| li::::/    「何で知ってるお!誰から聞いたお!?」
      /: : : : : : l\`ー '/j: : ::ヽ     
    \ヽ :ヽ: : : : 7ヽ />: : : :r:\ 
     ( ̄ ⌒⌒⌒⌒ ̄⌒ ⌒ ⌒ヽ
      ヽ               \







163 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:04:39 ID:.WuWRnIo

跳ね起きて唾を撒き散らすやる夫をみると、できる夫はしてやったりの表情を見せる。

        / ̄ ̄ ̄\
      /        \
     /  \   /   ヽ      「スカウトの円堂さんが教えてくれました。だが別口でも聞きましたよ?」
     |  (_)  (_)   |
     \  、__',_,    __,/
     /         \

↓スカウトの円堂さん
------------------------------------------------------------------------------------------
             (_   ,,   、::::::::: : : : : : : |        ─    |
             |    ─ _ \::::::: : : : : : |   、 、      __ ヘ
             (_\___    \::::: : : : : |   __  ─    ノ
               |           \:::: : : :|     ,、    = _j、
             /L─ _        丶: : |      _ ─ ノ-、
             | ̄ヽT - __         -    __ ─ 7l / l
            /ヘ  |:::|  /ク<ー- 、──── ア /==、  |::|./ l
          /  ヘ |:::|  ヽゝ_ソ\\ ノ l  /ィヒ__ソ  '  |:::|  /    みんな!野球やろうぜ!
          l | ̄ ̄へ|::|  、、 、、    ̄  ヽ      、 、  |:::|/、\
         __| | 、丶  |::l          ,l           |:::l: \\\
         _| l ̄     Vヘ v、       ’    ___     イ|::l\ \\\
          / -         |\   ヽ────  ̄-ヘ^)  /l レ\ \ \\\
       / /     、    |  ゝ   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  / /    \ >  ┼l--ヽ
      //  -    、 / |   >   ___  -   /  、   l l  l l  |
    //    -    >   l  /i i      /,.     / 、丶  /  l |  l  | |
   //        /  、   -   i i    // 丶   /     /   l |  |. | |
 / /         /          i i  / , '   丶. ∧/   /    | |  | | l
./ /   \    /       、 ,, 、、  i V , '        丶       | |  ヽ丶 )
      \\--'        丶     i /     雷    、 \     ヽヽ  | _/<
        ̄>          \     '       門    \/\   / / <  |
------------------------------------------------------------------------------------------







164 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:05:22 ID:.WuWRnIo
      ____
    /:::::::::  u\
   /ノ└ \,三_ノ\   ,∩__
 /:::::⌒( ●)三(●)\ fつuu   「別口・・・?誰だお!」
 |::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ | |   |
 \:::::::::   ` ⌒´   ,/_ |   |
   ヽ           i    丿
  /(⌒)        / ̄ ̄´
 / /       /

          ____
        /     \
      /  ⌒   ⌒\
     /   (● )  (<) \    「クラスの女子が教えてくれました。職員室で怒鳴りあっていたらしいですね?」
     |       __´___    |
    \       `ー'´   /
       〉         ⌒ヽ
.     |          、  \_
      !          ヽ   _⌒)

        .____
     ;/   ノ( \;
    ;/  _ノ 三ヽ、_ \;       やる夫の顔が渋くなる。
  ;/ノ(( 。 )三( ゚ )∪\;      あれだけ派手にやれば流石にばれるとは思っていたが、
 ;.| ⌒  (__人__) ノ(  |.;     それにしても噂の広まるスピードという奴は―
 ..;\ u. . |++++|  ⌒ /;







165 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:06:01 ID:.WuWRnIo
       ____
     /   ノ( \
   /  _ノ  ヽ、_ \        「怒鳴っていたのは梅岡のバカだけだお。やる夫は怒鳴ってなんかないお」
  / ノ( ●━━●   \
  |  ⌒ (__人__) ノ(  |
  \     ` ⌒´   ⌒/

       ____
     /      \
    /_,ノ   \  \       「監督が?何故ですか?」
  / (●)  (●)   \
  |      '        |
  \    ⌒     /

監督が怒鳴ったのが信じられないというような口振りに、やる夫はさらに腹が立った。

実際は監督の宝物であるできる夫が怒鳴られないだけで、
やる夫などは怒鳴られ、殴られたという印象しかないのだが。







166 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:06:50 ID:.WuWRnIo
       ____
     /     \
   /_ノ  ヽ、_   \      「実力不足だからプロテスト合格を辞退して、大学に行けっていわれたお。
  /(●)三(●))   .\     あの口振りからするに、もうやる夫がどの大学に入るかは決定事項だったみたいだお」
  |   (__人__)      |
  \ ヽ|r┬-| /   /
  /   `ー'´      \

          ____
        /     \
      /        \    「大学とのパイプ役ですか。確かに聞く話ではありますね」
     /  \    /  \
    |    (●)   (●)   |
    \      ´   u /
    /     ⌒     \







167 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:07:14 ID:.WuWRnIo
                  ___
                    /\:::::::::/\.
                   /:::<◎>:::<◎>:::\      「なぁーにが”その方がお前のためだ”だお!
                  /::::::::⌒(__人__)⌒::::::\     自分の事しか考えてないクセによく言えたもんだお!」
                  |     ` ー'´  u   |
                  \  u   :::::     /
                  /    :::::::::::::::::::    \
                /                 \  〈〈〈 ヽ
                               (〈⊃  } }

言っている間に先ほどの怒りが蒸し返され、やる夫は近くにあったゴミ箱を蹴飛ばした。
アルミでできたゴミ箱は大きな叫び声を上げながら、腹に貯まったものをぶちまけていく







168名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:07:16 ID:5OqbO/DE
ここのは駄目な梅岡か







169 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:07:33 ID:.WuWRnIo
        ____
       / ⌒  ⌒  \
     ./( ―) ( ●)  \
     /::  __',__   :::::  | チラッ
     |    `ー'´     .|
     \          /

         ___
       /     \
      / /      \   「まあ、私も大学進学をオススメしますがね」
    / (_)        \
    |'__,            |
     \           /

       ____
     /⌒  ⌒\
   / 《;・;》  《;・;》 \      「・・・どういう意味だお?」
  /::::::⌒(__人__)⌒:::::\
  |     トェェェイ     |
  \    ヽニニソ    /

やる夫の声に剣呑なものが混じった。
できる夫を睨み付けるが、できる夫は涼しい顔でそれを受け止める。







170 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:08:04 ID:.WuWRnIo
        ____
      /     \
    /  -     - \
  /   (●)  (一)  \     「実力不足です。やる夫君はプロでは通用しない」
 |      __´___    . |
 \      `ー'´     /
 /     ∩ノ ⊃   /
 (  \ / _ノ |  |
. \ “  /__|  |
   \ /___ /

       ____
     /     \
   / ⌒   ⌒ \      「知ってるお」
  / -=・=-  -=・=- \
  |      (__人__)      |
  \     |++++|」_キラッ/
       `ー''´ l







171 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:08:34 ID:.WuWRnIo

きつい言葉を投げかけたつもりだったが、不適に笑うやる夫に何故か自信めいたものを感じた。
できる夫はやる夫をにらみ返し、やる夫の言葉を待つ。

          ____
        /     \
      /        \
     /  \    /  \
    |    (●)   (●)   |
    \      ´   u /
    /     ⌒     \







172 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:09:04 ID:.WuWRnIo
        ____
      /      \
     /  ヽ、   _ノ\                      ・ ・ ・ ・ ・
   /   (● )  (●) \        「通用しないのは、今のやる夫だお」
   |       (__人__)    |
   \      ` ⌒´   /ヽ
    /   {;;;;;;;}        \
    (  ヽγ⌒)         ゝ   i
 ̄ ̄ ̄\__/ ̄ ̄ ̄(⌒)__ノ ̄ ̄ ̄ ̄

        / ̄ ̄ ̄\
      /        \
     /  \   /   ヽ        「2、3年プロの二軍で鍛えれば・・・ですか?それほど甘い・・・」
     |  (_)  (_)   |
     \   __',__    __,/
     /   `ー'´    \

             __
            -´   ``ヽ
          /::::::::::|::::::    `ヽ
         /:::\::::::::<● >   `ヽ   「そんなちんたらしたペースでやる気はないお
    ((   / <●>::::::::::⌒      )   野球しかない生活で、すぐさまお前を抜いて見せるお!」
        |  ⌒(_人__)       ノ | |
        ヽ    )vvノ:      / ノノ
          ヽ (__ン       人
           ヽ          \







173 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:09:32 ID:.WuWRnIo

      / ̄ ̄ ̄\
    / _,ノ  ⌒ \     「無理です」
   /  (●)  (●) \
  |     、 ´       |
  \      ̄ ̄    /

       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ―)  (―)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \    「無理じゃないお」
  |       |++++| 」_ キラッ |
  \     `ー''´ l   /

       ___
     /     \
    /  \   /\
  /   (●)  (●) \    「無理です!」
  |       __',_,    |
   \     /__/   /

       ____
     /⌒三 ⌒\
   /( ○)三(○)\      「楽勝だお!」
  /::::::⌒(__人__)⌒:::::\
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /







174 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:10:05 ID:.WuWRnIo
       ____
     /      \
    /  ─    ─\
  /    (_)  (_) \
  |        '      |
  \      ⌒   /
しばらく睨み合うと視線を外したのはできる夫だった。

      ____
    /―  ―\
   /  ⌒   ⌒ \     勝った。
 /    _ノ 、_! ヽ  \   どうでもいいことだがやる夫が少し得意げな顔になる。
 |      トェェェイ     |
 \     ヽニソ    /

           ____
         /     \
       / _,ノ  ⌒ \
.     /   (一)  (ー)   \
.      |        ´    ij  |
     \     ⊂つ     /
     /           \
その顔を嫌そうに眺めながらできる夫は立ち上がった。







175 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:10:28 ID:.WuWRnIo
      / ̄ ̄ ̄\
    / _,ノ  ⌒ \
   /  (●)  (●) \            「6限はでることにします。あなたと一緒では息がつまります」
  |     、 ´       |
  \      ̄ ̄    /

          ____
        / ⌒  ⌒\
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     γ´          ,ヽ/ /
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176 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:10:58 ID:.WuWRnIo
                                                         ____
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                         「あなたには、絶対に追いつかれません」  /:::::::::::::::::::..   (●) \
                                                     |:::::::::::::::::::::::::::..    、__|
                                                     \:::::::::::::::::::::::::::..   /
          ____
        /     \         
       /  ─     \
        ' (●)       \ 「絶対追いつくお」
      (l、__)          |
        ⌒´         /
       `l          \
        l           \

お互いそっぽを向きながら言い放つ。


ガチャリと扉が開く音がした。
どうやらできる夫は本当に6限に出席するらしかった。

         .____    .i^マ'フ
       ./⌒  ⌒\  レ' /
       /( ―)  (―) ./ ,イ ヽ、          勝った。
     //// .(__人__) ./ 、 /ーヘ_,.ヽ,         やる夫は姑息な勝利感を得る。
     |     .´ ⌒` ./ 、\`ヽ´__ .`t
.     \      .../   ヽ r'´_}__,   {
            ./  {'T /`7/ _,ノ  !
          .-'     `7'/ヽY´   |







177 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:11:54 ID:.WuWRnIo

しかしすぐにまた扉が開く音がして、できる夫の声が浴びせられる。
           ____
          /     \
   .     / _,ノ  ⌒ \
       l^l^ln  (●)  (●) \     「あ、蹴飛ばしたゴミ箱のゴミは集めておいてくださいよ。
       ヽ   L   、 `       |     不潔なのは嫌いですし、なによりマネージャーが怒りますよ?」
        ゝ  ノ    ̄ ̄    /
      /   /          \
     /   /             \
   . /    /         -一'''''''ー-、.
   人__ノ        (⌒_(⌒)⌒)⌒))

       ____
     /     \
   /_ノ  ヽ、_   \
  /(●)三(●))   .\           やる夫の勝利感は一瞬で吹き飛んだ。
  |   (__人__)      |
  \ ヽ|r┬-| /   /
  /   `ー'´      \







178 ◆oLG9iWoh0E:2009/10/28(水) 21:12:33 ID:.WuWRnIo
--------------------------------------------------------------------------------------


-本当に、気に食わない奴-


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                                                  第二話 やる夫とプロテスト 終







179名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:14:37 ID:.R4PMX6.

まあ仲良くは出来ないよな








180名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:15:51 ID:5OqbO/DE

やる夫は真っ直ぐすぎて、あまり周りが見えなくなるタイプなのかな
でもプロテストの時はそうでもなかったし、できる夫との相性が悪いだけなのか…
次も楽しみにしてるんよ








181名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:17:52 ID:HfIgfmpg
なにこの>>1・・
初作品でこれだけ引き込まれるものを作るとは・・
末恐ろしい子・・



乙!続き待ってるぜ!!








184名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:22:33 ID:aGujLfz6

仲良くはないけど認め合ってる感がいいなぁw








193名無しのやる夫だお:2009/10/28 (水) 21:42:41 ID:xXGnZ8dA
乙。
明日も期待。









名門高校ライバル物語





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だ

    プロに行って埋もれて早々に捨てられるリスクを負おうか、
    大学4年間で少しでも実力をつけてプロに入るか、
    難しいわな。
    [ 2009/11/11 12:32 ] [ 編集 ]
    高卒でプロ入りなら早々に捨てられるってことはそうないだろ
    つーか、できる夫はプロなのか?進学なのか?
    [ 2009/11/11 13:11 ] [ 編集 ]
    できる夫は今までサボったこともないのに
    何故このときサボって部室にいたんだろうな
    [ 2009/11/11 13:29 ] [ 編集 ]
    できる夫はもうドラフトで指名が決定してんじゃね?
    やる夫とカズキが合格しそうだな
    [ 2009/11/11 15:49 ] [ 編集 ]
    やべえ・・・おもしろすぎるんだが・・・
    [ 2009/11/11 16:15 ] [ 編集 ]
    今までにないタイプの野球のお話だからそれはそれではまる
    [ 2009/11/11 19:15 ] [ 編集 ]
    面白い
    いい意味での息苦しさがたまらないね
    [ 2009/11/11 20:33 ] [ 編集 ]
    AAと文のバランスがいい 引き込まれる
    [ 2009/11/11 21:36 ] [ 編集 ]
    円堂wwww サッカーやれよwww

    ※34325
    2,3年で潰れる方も結構いる。地元の人でいない?高校生でプロ野球選手になったのに、トレードやらなんやらで1軍生活がなく引退した人とか。
    [ 2009/11/12 00:02 ] [ 編集 ]
    これは名作の予感するなぁ…
    [ 2009/11/12 00:08 ] [ 編集 ]
    話の流れ的にできる夫は大学進学じゃね?
    [ 2009/11/12 03:05 ] [ 編集 ]
    できる夫はハンカチ王子イメージ
    [ 2009/11/12 04:03 ] [ 編集 ]
    出来るならゴドーとのバッテリーをプロで見てみたいな…
    [ 2009/11/12 10:55 ] [ 編集 ]
    厳密にはプロテストに合格しても、プロ野球選手になれるとは限らない
    高校生なら合格したとしても最終的にドラフトにかからないと入団は不可能
    今年のドラフトでも、テストには合格したが結局ドラフトでは指名されずにプロ野球選手になれなかった独立リーグの選手がいた
    [ 2009/11/13 00:57 ] [ 編集 ]
    駄目すぎて高卒1年目で首になった奴もいたような
    [ 2009/11/13 14:30 ] [ 編集 ]
    なんだ、普通に大学にいけたのか。
    そういえば野球漫画の主人公でプロにいけるのに
    大学にいった奴はいないな。

    第三野球部の檜あすなろは千葉大に合格はしたが
    それをけってプロ入りしたし。
    [ 2009/12/18 10:40 ] [ 編集 ]
    プロテストでホームラン打たれても合格できるものなのかな?
    狭き門どころか、開いてすらいないかも知れない門なんでしょ?
    [ 2010/01/05 11:32 ] [ 編集 ]
    俺が指導者なら、つぶしが利く大学勧めるかなぁ。
    でもこれくらいの負けん気と、素直さがあれば指導者しだいでは化けるかもな。
    まぁそういう人に出会えるのも実力のうちなんだが。
    できる人間の周りに出来る人ってあつまるよね…。
    [ 2010/01/19 15:33 ] [ 編集 ]
    地方の大学野球でエース張ってプロ行くやつ多いんで
    未完成やウリがなければ大学だろうな、投手なら尚更。
    でも、このやる夫の性格だと学生気分でやったら、
    何年たっても大成しなさそうなきがする。
    [ 2010/02/24 20:58 ] [ 編集 ]
    山際淳司のタッチに似てるな。
    これ読んで気に入ったのなら「スローカーブをもう一球」とか読んでみることをお勧めするよ
    [ 2010/07/07 14:45 ] [ 編集 ]
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やる夫ブログについて
20101110:「やる夫はロス市警の警部のようです」を掲載させていただきます。本当にお待たせして申し訳ございません。これ以降も随時、更新の途絶えていた作品を掲載していきたいと考えております。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、どうか長い目で見ていただければ幸いです。

20101030:「やる夫のサクラ大戦」にて、記事の掲載順序を誤りました。 作者様、および楽しみにしていた読者様にお詫び申し上げます。 申し訳ございませんでした。

20101004:「やる夫たちが夢の国で遊ぶようです」につきまして、こちらの不具合で記事が切れてしまっております。作者様、及び楽しみに読んでくださっている読者の皆様にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。
一度下書きに戻させていただきます。よろしくご了承ください。
「やる夫で学ぶことわざ」の作者様より、やる夫ブログ用のスポンサー案内をいただきました!本当にありがとうございます!さっそく使わせていただきます!

20100811:皆様、大変ご無沙汰しておりました。ぼちぼち更新を再開できればと考えております。
「やる夫がDQⅢの勇者になるようです」についてですが、コメントを頂けるのは大変うれしいのですが、他作品のコメント欄での投稿はご遠慮願えれば幸いです。
恐縮ですが、ご協力よろしくお願いいたします。

20091222:年末なので順調に更新量が減っております。今日明日はお休み、再開一発目は「やらない夫の超兄貴」になる予定です。作者様、まとめが遅くなり申し訳ございません。

20091208:今週クソ忙しいので、かなり更新が減ります。ご了承ください。

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やる夫ブログについて

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やる夫ブログ(裏)(18禁です)


 ネ タ 投 稿 お 待 ち 
 し て い ま す ! 
(↑結構心から待ってますw)

 ネタ投稿の他、転載お断りの記事、相互リンクのご希望等ございましたら、お手数ですが下のメールフォームよりお知らせください。なお、http:を付けるとエラーになってしまうようなので、ご投稿いただける際にはhttp:を抜いていただきますよう、よろしくお願いいたします。
相互リンクの反映に時間がかかってしまい申し訳ありません。気長にお待ちください。


嬉し泣き
美麗なタイトル画像を描いてくださっているのは、こちらの方々です。
本当にありがとうございます。


七市様
Shadow3_convert_20091008101141.jpg
ハルヒとやる夫、やらない夫の表情が最高のタイトル画像。冬にぴったりの美しい作品です。


1様
http://blog-imgs-15.2nt.com/y/a/r/yaruomatome/yaruoblog_title_convert_20091026144430.jpg
柔らかで暖かい雰囲気がたまらない作品。みゆきさんヤバすぎで管理人狂喜の舞を舞っておりますwww

1様のプロフィールはこちら


65様
securedownload_convert_20091008101321.jpg
同じく「やる夫がチェルノブイリに旅立つようです」より。元ネタの雰囲気をビンビンに伝えるダークな作品。


草葉様
Shadow3_convert_20091008101141.jpg 「やる夫がチェルノブイリに旅立つようです」をモチーフにしたタイトル画像です。物語の後、このタイトルを見て吹きました。

219c0c442.jpg

草葉式


味噌様
yaruoblog_convert_20090519194443_convert_20091008101235.jpg
やる夫ブログ初!物語とタイトル画像のコラボレーション!快く、最高に美しいタイトル画像を描いて下さった味噌様に感謝です!




トンボ様
minamike_convert_20090519194731_convert_20091008101216.jpg
夏にぴったりの逸品を、トンボ様よりいただきました!水着ハァハァ(´Д`;)


トンボのかんさつ日誌


ヒジキ様
nagato_convert_20091008101341.jpg
管理人のツボにはまりまくりの長門!大好きだ!結婚してくれー!



ヒジキ煮


aro様
yaruo_blog_fix_convert_20090210225801_convert_20091008101403.jpg
らきすた勢の見事な描写もさることながら、このやる夫にしてやられました。


Charged time-out


Yutaka様
RMm06_convert_20090127165950_convert_20091008101426.jpg
個人的に水銀燈が一番好きです。タイトルのセンスも◎。本当に有難うございます。





マブチョコ_m様

この魅力的なボディにくらくら!管理人はこの人の同人誌が大好きです!やる夫ブログの記念すべき初タイトル画像。全てはここから始まりました。



うにゃらら大飯店



イチオシ

やる夫がDQⅢの勇者になるようです

自らを成長させる姿に心震える
作品。普通の掛け合いなのに、
自然と笑みがこぼれる構成と
演出は見事の一言。
自分を好きになれる、極上の映
画を見た後のような読後感は、
自信を持って「最高だ!」と賞
賛できる作品です。





過去の「イチオシ」一覧を作りました。
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